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Ep.1572 Blockが音声のみで学習した対話AI「Dessa」を発表──テキストを介さない全二重通信が変える音声インターフェース(2026年10月26日配信)

Ep.1572 Blockが音声のみで学習した対話AI「Dessa」を発表──テキストを介さない全二重通信が変える音声インターフェース(2026年10月26日配信)

Season 1 Episode 1572 Published 2 days, 11 hours ago
Description

タイトル


Blockが音声のみで学習した対話AI「Dessa」を発表──テキストを介さない全二重通信が変える音声インターフェース


このエピソードで登場するキーワードを説明します。


Block: ジャック・ドーシー氏が率いる米国のフィンテック企業。決済サービスのSquareやCash Appなどを展開し、基礎的なAI研究開発にも注力している。


Dessa: Block社内のAI研究ラボ、および同ラボが2026年10月24日に発表した、人間の会話音声のみでゼロから学習した対話型AIモデル。


ジャック・ドーシー: Twitterの共同創業者であり、現在はBlockの共同創業者兼会長(Block Head)を務める人物。Dessaの研究チームは同氏に直属している。


全二重通信(フルデュプレックス): 送受信を切り替えながら行うのではなく、相手の声を聞きながら同時に自分の声を発し、相槌や割り込みをリアルタイムで行える通信および対話方式。


NVIDIA GB200 NVL72: NVIDIAのBlackwell世代GPUを72基とGrace CPUを36基、単一ラックに高密度統合した液冷式の超大型AIサーバーシステム。


それでは解説に入ります。


決済サービスのSquareやCash Appを展開するBlockは、米国時間の2026年10月24日、テキストデータを一切使わずに人間の会話音声だけでゼロから学習させた対話型AIモデル「Dessa」を発表しました。開発を担ったのは、2020年にBlockが買収したカナダ・トロント発のディープラーニング系スタートアップ「Dessa」の元メンバーらで構成される社内ラボで、創業者のジャック・ドーシー氏に直属する少人数の研究チームです。


現在主流となっている音声AIの多くは、人間の話し言葉を一度テキストに変換して大規模言語モデルに入力し、出力されたテキストを再び合成音声として読み上げるパイプラインを採用しています。また、近年のマルチモーダルモデルであっても、その基盤には膨大なテキストによる事前学習が存在します。しかしBlockの研究チームは、音声をテキストに変換した瞬間に、声のトーンや感情、皮肉、ため息、息遣い、微妙な間といった非言語情報がすべて失われてしまう点を問題視しました。たとえば同じ文章であっても、どの単語を強調して発音するかによって意味は全く異なります。そこで彼らは、人間の赤ちゃんが文字を読む前に耳から言葉を覚えるのと同じように、事前学習済みのテキストモデルを一切頼らず、生の会話音声データのみからAIに言語と対話を学ばせるというアプローチに挑みました。


その結果誕生したDessaは、音声を入力して音声を直接出力する真のSpeech-to-Speechモデルとして、人間同士の雑談と見分けがつかないほどの自然さを獲得しました。相手の話を聞きながら同時に反応できる全二重通信に対応しており、相手が話し終わるのを待つのではなく、文の途中で面白いと感じた瞬間に笑い出したり、絶妙なタイミングで相槌を打ったり、時には言葉を遮って割り込んだりすることができます。公開されているデモ音声では、結婚記念日のサプライズを聞いて息を呑み、涙ぐんだような声で感謝を伝える様子や、言葉に詰まった相手の文末を自然に補完する様子、さらには「もっと大きな声で話して」と頼まれると即座に声量を上げるといった振る舞いが確認できます。これらは個別にプログラムされたものではなく、すべて生の会話音声の聞き取りだけから自律的に獲得された能力です。


技術的な効率性の高さも業界の注目を集めています。音声データは同じ言葉を話しても波形が毎回異なり、1単語あたりのデータ量もテキストの数千倍に達するため、テキストなしで音声モデルをゼロから訓練するのは計算コストの面で極めて困難とされてきました。しかし開発チームは独自の工夫により、テキストベースの大規模言語モデルに比べて数百分の1という少ない単語量から言語と一般知識を習得させることに成功しました。学習に要した計算資源は「NVIDIA GB200 NVL72」わずか1ラック分にとどまっています。さらに推論処理も実時間より高速に動作するよう最適化されており、クラウドの大規模サーバーを介さずとも、AppleのM4 Maxチップ以上を搭載したMacBook Pro上でローカル実行できるほど軽量に仕上がっています。


Blockがこのモデルを開発した背景には、単なる技術的探究心だけでなく、AIの安全性に対する強い問題意識があります。AIが自律性を高め、実社会のあらゆる場面で人間のパートナーとして機能するようになるとき、ユーザーの声に含まれる苦痛や焦り、悲しみといった感情を読み取れないまま淡々と処理を続けることは重大なリスクになり得ます。人間の感情やニュアンスを直接聴き取れるインターフェースこそが、将来の高度なAIと人間との安全な協調に不可欠であるというのが同社の主張です。


現在、Dessaは一般公開に向けたウェイトリストの登録を受け付けている段階であり、まずは意図しないリスクや脆弱性を洗い出すため、外部のAI安全性研究者に限定して早期アクセスを提供しています。巨大テック各社が数兆パラメータのテキストモデルや業務自動化エージェントの覇権を競うなか、計算資源を抑えつつローカル端末で動く「音声特化・感情理解」という独自の領域を切り拓いたBlockの試みは、AIインターフェースの新たな進化の方向性を示しています。


今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。

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