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Ep.1565 SpaceX、2026年第3四半期決算で売上高161%増・純利益44億ドルの黒字転換──AI部門「SI」がStarlinkを抜いて最大の収益源へ(2026年10月21日配信)
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タイトル
SpaceX、2026年第3四半期決算で売上高161%増・純利益44億ドルの黒字転換──AI部門「SI」がStarlinkを抜いて最大の収益源へ
このエピソードで登場するキーワードを説明します。
SpaceX : イーロン・マスク氏が率いる宇宙・通信・AIの複合企業。2026年6月に米ナスダック市場へ上場し、ロケット打ち上げ、衛星通信、AIインフラの3事業を展開している。
SI (Super Intelligence): 従来の「AI」部門から改称されたSpaceXの事業セグメント。大規模データセンター「COLOSSUS II」によるクラウド計算資源の提供や、AIモデル「Grok」、自律型エージェント「Grok Bot」などを展開している。
Cursor: AIを活用したコードエディタを開発する企業。2026年8月14日にSpaceXが企業価値評価600億ドルベースで買収を完了し、SI部門のアプリケーション層を担う中核となっている。
Starlink: 低軌道衛星群を用いた高速インターネット通信サービス。SpaceXの「Connectivity(通信)」部門の中核であり、個人向けだけでなく航空機や法人、政府機関向けにも急速に導入が進んでいる。
Starship: SpaceXが開発する完全再使用型の超大型ロケット。第3四半期中に初の軌道飛行および収益化ミッションとなる第14回飛行(Flight 14)を成功させた。
それでは解説に入ります。
米国の宇宙・テクノロジー大手であるSpaceXは、米国時間の2026年10月20日、2026年第3四半期(7月から9月期)の決算を発表しました。売上高は前年同期比161パーセント増の145億7500万ドルに達し、LSEGがまとめた市場予想の127億2000万ドルを大きく上回りました。最終損益も前年同期の10億5400万ドルの赤字から、44億400万ドルの黒字へと劇的な転換を果たしています。営業利益は27億9100万ドル、調整後EBITDAは前年同期比306パーセント増の88億900万ドルを記録しており、上場企業としての収益力の高さを改めて市場に印象づけました。
今回の決算で最大の転換点となったのは、従来の「AI」部門から名称を改めた「SI(Super Intelligence)」事業が、売上規模で初めて衛星通信のStarlinkを追い抜き、SpaceX最大の稼ぎ頭に躍り出たことです。SI部門の第3四半期売上高は、前年同期の8億1300万ドルから実に830パーセント増となる75億6000万ドルへと爆発的に拡大し、全社売上の過半数を占めるに至りました。成長を牽引したのは、外部企業に対するクラウド計算インフラの提供契約や、法人・個人双方におけるAIモデル「Grok」および常時稼働型エージェント「Grok Bot」の普及です。さらに、2026年8月14日に企業価値600億ドル規模で買収を完了したAI開発ツール「Cursor」も、期末までの約1か月半だけで6億800万ドルの売上貢献を果たしました。Cursor買収に伴う約12億ドルの株式報酬費用を計上しながらも、SI部門単体で4億3100万ドルの営業黒字(調整後EBITDAでは49億5300万ドル)を確保しており、計算インフラからAIモデル、開発アプリケーションまでを垂直統合する戦略が早くも収益として結実しています。
このSI事業を支えるインフラ投資も桁違いの規模で進んでいます。第3四半期におけるSpaceX全体の設備投資額(Capex)は195億9300万ドルに上りましたが、その約84パーセントにあたる164億4400万ドルがSI部門へ投じられました。超大型データセンター「COLOSSUS II」の建設推進により、稼働可能な計算容量(ネームプレート・コンピュート)は2026年6月末時点の1.4ギガワットから、9月末時点で1.7ギガワットへと拡大しています。
一方、これまで成長を牽引してきた「Connectivity(通信)」部門も依然として力強い伸びを見せています。同部門の売上高は前年同期比69パーセント増の52億4800万ドル、営業利益は同99パーセント増の23億6700万ドルとほぼ倍増しました。2026年9月末時点のStarlinkの個人・中小事業者向け契約数は、先進国市場での拡大を背景に前四半期から160万件増加して1360万件に到達し、1契約あたりの月間平均収入(ARPU)も前四半期比5パーセント増の69ドルへと改善しています。また、法人・政府機関向けの売上も前年同期比91パーセント増の21億2700万ドルに達し、Starlinkを導入した航空機は3800機を超えました。さらに期末後の2026年10月8日には、「Starlink Mobile」戦略を推進するため、全米の800メガヘルツ帯の周波数ライセンスを取得する契約を締結したことも明らかにしています。
祖業である「Space(宇宙輸送)」部門については、売上高が前年同期比6パーセント増(前四半期比では84パーセント増)の17億6700万ドル、営業損益はStarshipへの研究開発費の増加により700万ドルのわずかな赤字(調整後EBITDAは3億5700万ドルの黒字)となりました。特筆すべき成果として、超大型ロケット「Starship」の第14回飛行(Flight 14)において初の軌道飛行および収益化ミッションに成功し、従来のFalcon 9の約10倍の通信容量をもたらす次世代の「Starlink V3」衛星26基を軌道へ投入しました。さらに、年間数千回のStarship打ち上げを可能にする次世代宇宙港「Starbase」をルイジアナ州に新設し、2029年の初打ち上げを目指す計画も発表されています。
9月末時点で513億ドルもの潤沢な現預金を抱えるSpaceXは、Starlinkが生み出す年間100億ドル規模の安定した営業キャッシュフローと宇宙輸送の独占的な地位を土台にしながら、収益と投資の主軸を明確に「AI・超知能インフラ」へとシフトさせました。ロケット企業から世界最大級のAIインフラ企業へと変貌を遂げた同社の決算内容は、メガクラウド各社がしのぎを削るAI計算資源の覇権争いにおいて、SpaceXが最も強力なプレイヤーの一角に浮上したことを明確に物語っています。
今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。