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Ep.1376 Google、Geminiを“直焼き”する新チップ「Frozen v2」開発へ──究極の推論効率を求めるパラダイムシフト(2026年7月23日配信)
Description
タイトル
Google、Geminiを“直焼き”する新チップ「Frozen v2」開発へ──究極の推論効率を求めるパラダイムシフト
このエピソードで登場するキーワードを説明します。
Google: 検索エンジンおよびクラウドインフラの世界的企業。独自AIチップ「TPU」の開発でも長年の実績を持ち、AIインフラ市場を牽引する。
Frozen v2: Googleが開発を進めているとされる次世代の推論用チップ。Geminiのアーキテクチャをシリコンに直接組み込むことで、圧倒的な電力効率と処理速度を狙う。
Taalas: AIモデルの構造をハードウェアに固定するアプローチを先行して進めるカナダのAI半導体スタートアップ。
推論 (Inference): 学習済みのAIモデルを利用して実際に回答を生成するプロセス。稼働規模の拡大に伴い、AIインフラにおける最大のコスト要因となっている。
それでは解説に入ります。
2026年7月20日、米IT系メディアThe Informationの報道により、Googleが自社の生成AI「Gemini」の設計をシリコンに直接組み込んだ新型サーバーチップ、通称「Frozen v2」を開発していることが明らかになりました。2028年の実戦投入を目指すこのチップは、現行の自社製AIチップと比較して、消費電力あたりのトークン処理効率を6倍から10倍に引き上げるという野心的な目標を掲げています。
現在市場を席巻しているNVIDIAのGPUや、Google自身が展開するTPUは、あらゆるAIモデルを読み込んで実行できる汎用性を備えています。しかし、Frozen v2はこの汎用性を捨て、Geminiのニューラルネットワーク構造をハードウェアの回路として固定化(フローズン)するアプローチを採用します。モデルの各種設定値である「重み」の更新は可能にするものの、アーキテクチャ自体をシリコンに刻み込むことで、メモリとチップ間の膨大なデータ移動を省略し、推論スピードの劇的な向上とコストの最小化を実現します。
この開発の背景には、深刻化するAIコンピューティングリソースの逼迫があります。Googleの社内でも処理能力の限界から一部のクラウド顧客の要望を断らざるを得ない状況が生じており、増え続ける推論コストの抑制が急務となっています。周辺の市場動向に目を向けると、この「モデルをシリコンに固定する」という手法は業界の新たな潮流になりつつあります。例えば、カナダのスタートアップTaalasは、Metaの言語モデルのパラメータをマスクROMとして固定した専用チップを開発し、NVIDIA製GPUを圧倒する推論速度と低消費電力を実証して耳目を集めています。GoogleのFrozen v2は、この極限の効率化を自社の超大規模インフラに適用する試みといえます。
Googleは直近で推論に特化した第7世代TPU「Ironwood」をリリースし、Metaなどの巨大企業へ大規模にリースする戦略を本格化させています。外部顧客や多様なモデルの実行には柔軟なTPUを提供しつつ、自社の最もトラフィックが多いGeminiの運用には専用設計のFrozen v2を充てるという多層的なハードウェア戦略は、巨大テック企業がいかにしてAIの運用コストを制圧し、ビジネスモデルを成立させようとしているかを明確に示しています。単なる演算能力の競争から、アーキテクチャの根本的な見直しへとフェーズが移行する中、数年後のAIインフラ市場の勢力図に大きな影響を与える動向として注視が必要です。
今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。