Episode Details
Back to Episodes
Ep.1356 Metaの独自AIチップ「Iris」が9月量産開始──脱Nvidiaと14ギガワット構想の全貌(2026年7月16日配信)
Description
タイトル
Metaの独自AIチップ「Iris」が9月量産開始──脱Nvidiaと14ギガワット構想の全貌
このエピソードで登場するキーワードを説明します。
Meta: 大手ソーシャルメディア企業であり、現在はオープンソースAIモデル「Llama」の開発や、自社データセンター向けAIインフラへの巨額投資で業界を牽引している。
MTIA (Meta Training and Inference Accelerator): Metaが社内開発を進めるAIワークロード特化型の独自プロセッサ群。学習と推論の双方を効率化する。
Iris: 2026年9月に量産が開始される予定のMTIAプロジェクト傘下にある独自AIチップの開発コードネーム。
Broadcom: 米国の通信・半導体大手。Metaのカスタムシリコン開発における設計パートナーを長期にわたり務めている。
TSMC: 台湾の半導体受託製造最大手。AI半導体製造を席巻しており、Irisの主力製造ラインを担当する。
それでは解説に入ります。
2026年7月9日、Metaが自社開発のAIチップ、コードネーム「Iris」の量産を2026年9月から開始する計画であることが社内メモにより明らかになりました。このチップは、Metaが推進する「MTIA」プロジェクトの最新世代であり、Broadcomとの共同設計、およびTSMCによる製造という体制で開発が進められてきました。テスト工程はわずか6週間で大きな不具合なく完了しており、社内での検証が極めて順調に進んでいることを示しています。
この独自チップ量産の背景には、Metaが掲げる壮大なインフラ拡張計画があります。同社は2026年のAIインフラ向け資本支出を1,250億ドルから1,450億ドルへと引き上げており、2026年中にデータセンターの計算能力を7ギガワット規模へ引き上げ、2027年にはこれを14ギガワットに倍増させる目標を掲げています。NvidiaやAMDなどの汎用GPUへの依存度を下げ、自社のワークロードに最適化した独自チップを投入することで、膨大な計算コストを抑制する狙いがあります。
特筆すべきは、Metaが業界標準である1〜2年の製品サイクルを覆し、2027年まで約6ヶ月という極めて短いスパンで新しいAIチップをリリースしていく方針を打ち出している点です。この強気な供給計画を支えるため、MetaはSamsungからのメモリ調達や、SanDiskからのフラッシュストレージ調達、住友電気工業からの光ファイバー設備調達など、多年にわたるサプライチェーンの確保をすでに完了させています。周辺情報として、TSMCの製造ラインが逼迫する中、MetaがSamsungに対して2ナノメートルプロセスでのMTIA量産に向けた10兆ウォン規模の大型契約を打診しているとの観測も浮上しており、複数のファウンドリを活用して供給網を強固にする戦略が見え隠れしています。
市場の反応もこの動向を敏感に捉えています。巨額の設備投資による財務圧迫を懸念する声がある一方、Metaが自社の余剰計算能力を外部に提供するクラウド事業「Meta Compute」を立ち上げ、AIリソースを直接収益化する方針を示したことで、投資家の間ではインフラ投資の回収に対する期待感が高まっています。この報道の当日、Nvidiaの株価は1.2%下落し、設計パートナーであるBroadcomの株価は2.6%上昇するなど、半導体市場全体の力学にも明確な影響を及ぼしました。巨大テック企業による「自社製シリコンによる垂直統合」は、今後のAIデータセンター市場における競争の決定的な要因となることが予想されます。
今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。