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Ep.1343 キオクシア、第10世代「BiCS FLASH」の出荷を開始──332層NANDが支えるAIデータセンターの省電力化(2026年7月9日配信)
Description
タイトル
キオクシア、第10世代「BiCS FLASH」の出荷を開始──332層NANDが支えるAIデータセンターの省電力化
このエピソードで登場するキーワードを説明します。
キオクシア: 旧東芝メモリ。NAND型フラッシュメモリの発明企業であり、現在も世界トップクラスのシェアを持つ日本の半導体メーカー。
BiCS FLASH: キオクシアが開発する3次元フラッシュメモリのブランド名。メモリセルを垂直方向に積層することで大容量化を実現する技術。
ウエハーボンディング技術(CBA): メモリセルアレイと周辺回路を別々のウエハーで製造し、後から貼り合わせる技術。チップの小型化と高性能化に寄与する。
TLC (Triple-Level Cell): 1つのメモリセルに3ビットのデータを記憶させる方式。容量と信頼性のバランスに優れ、データセンター向けSSDなどで広く採用されている。
それでは解説に入ります。
キオクシア株式会社は2026年7月3日、第10世代となる3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH」のサンプル出荷を開始したと発表しました。今回出荷されたのは容量1TbのTLC製品で、岩手県北上市に新設された北上工場第2製造棟において、パートナーであるサンディスクとの共同生産が開始されています。
近年、生成AIの急速な普及とデータセンターの拡張に伴い、ITインフラにおける消費電力の増大が世界的な課題となっています。第10世代BiCS FLASHは、この課題に対するキオクシアの戦略的アプローチを示す製品です。第8世代から導入されているウエハーボンディング技術「CBA」に加え、回路構成を最適化する「OPS」技術を採用したことで、インターフェース速度は第8世代比で33%向上し4.8Gbpsに達しました。さらに、積層数を332層に引き上げることでビット密度を59%向上させつつ、電力効率はデータの読み出し時で30%、書き込み時で18%改善しています。これにより、AI向けデータセンターのランニングコスト削減と性能向上を同時に実現します。
AI半導体需要の急増を背景に、キオクシアの業績と市場評価は著しい向上を見せています。2026年6月には同社の時価総額が一時的にトヨタ自動車を上回り、東証トップに躍り出るなど、株式市場からの期待値も高まっています。太田裕司社長は2026年7月3日、2026年度から3年間で年平均4,700億円規模の設備投資を継続し、需要動向次第では北上工場における第3製造棟の建設も視野に入れる方針を明らかにしました。
現在、NANDフラッシュメモリ市場では、韓国のSamsungやSK Hynix、米国のMicronといった競合他社との間で激しい積層数競争が繰り広げられています。キオクシアは、投資効率を重視した第9世代と、今回の高性能・大容量に特化した第10世代という二軸の開発戦略を展開することで、AIインフラ市場における多様なストレージ要件に柔軟に対応し、激化するグローバル競争において優位性を確保する構えです。
今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。