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Ep.1328 Apple、価格高騰で中国「ブラックリスト」企業CXMTからのメモリ調達を模索──AIが引き起こすスマホ市場の波紋(2026年7月2日配信)
Description
タイトル
Apple、価格高騰で中国「ブラックリスト」企業CXMTからのメモリ調達を模索──AIが引き起こすスマホ市場の波紋
このエピソードで登場するキーワードを説明します。
Apple: アメリカを代表する巨大テック企業。近年はAIインフラ需要に押されて部品調達コストが上昇しており、異例のサプライチェーン再構築を迫られている。
CXMT (長鑫存儲): 中国最大のDRAM製造メーカー。米国防総省の「中国軍事企業リスト」に登録されているが、既存メーカーよりも安価で大規模なメモリ供給能力を持つ。
DRAM (Dynamic Random Access Memory): コンピュータの主記憶装置として使われる半導体メモリ。AIデータセンター向けの需要急増により、世界的な供給不足と価格高騰が起きている。
それでは解説に入ります。
2026年6月29日、Appleが世界的なメモリ価格の高騰に対処するため、アメリカ国防総省のブラックリストに掲載されている中国の半導体メーカー「CXMT」からの部品調達をトランプ政権に打診していることが報じられました。イギリスのFinancial Timesなどの報道によると、Appleは2026年5月以前から商務省などの政府高官に対してロビー活動を展開し、CXMTとの取引に制裁が科されないよう水面下で保証を求めているとされています。
この異例の動きの背景には、AIデータセンターの急速な拡大に伴う半導体市場の構造変化があります。生成AIの爆発的な普及により、SamsungやSK Hynix、Micronといった世界の主要メモリメーカーは、高利益率が見込めるAIサーバー向けの高性能メモリに生産リソースを集中させています。そのしわ寄せとして、スマートフォンやPC向けの汎用DRAMの供給が逼迫し、調達価格が急騰しました。このコスト増の圧迫に耐えかねたAppleは、2026年6月25日にMacやiPadなどの主力製品の一斉値上げに踏み切りましたが、これが需要減退の懸念を招き、株式市場で約41兆円もの時価総額が吹き飛ぶ事態となりました。
こうした厳しい事業環境下において、Appleが交渉のカードとして白羽の矢を立てたのが中国のCXMTです。同社のメモリチップは既存のサプライヤーよりも10%から15%安価であるとされ、調達先の多様化と価格交渉力の回復を狙うAppleにとって極めて魅力的な選択肢となっています。しかし、CXMTは中国人民解放軍との関係が疑われるとして米国防総省の「中国軍事企業リスト(1260Hリスト)」に登録されているデリケートな存在です。現在、法的に取引が完全に禁止されているわけではないものの、米中ハイテク摩擦が激化する中で調達に踏み切ることは、エンティティリストへの追加といった米政府による急なライセンス規制の対象となる地政学リスクを伴います。
Appleは過去の2022年にも、中国市場向けのiPhoneに中国YMTC製のNANDフラッシュメモリを採用しようと試みましたが、米議会の猛反発に遭い計画の撤回を余儀なくされた経緯があります。今回のCXMTからの調達構想も、再びアメリカ国内の政治的対立を引き起こす火種となる可能性が高いと見られています。AIブームがもたらした部品供給の偏りが、絶対的な購買力を誇ってきたAppleでさえもサプライチェーンの抜本的な見直しに追い込んでいる現状は、AIインフラの覇権争いがコンシューマー製品のエコシステムにも不可逆的な影響を及ぼしていることを如実に示しています。
今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。