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Ep.1234 Cloudflareが語るAIの脅威と防衛──次世代モデル「Mythos Preview」がもたらすサイバーセキュリティの新常識(2026年5月28日配信)
Description
タイトル
Cloudflareが語るAIの脅威と防衛──次世代モデル「Mythos Preview」がもたらすサイバーセキュリティの新常識
このエピソードで登場するキーワードを説明します。
Cloudflare: 世界最大規模のCDN(コンテンツ配信ネットワーク)およびサイバーセキュリティ企業。Project Glasswingのパートナーとして、自社インフラの脆弱性診断に最新AIモデルを活用し、その知見を広く共有している。
Anthropic: 米国の有力なAI研究開発企業。「Claude」シリーズを手掛け、安全性に重きを置いたAI開発で知られる。
Claude Mythos Preview: Anthropicが開発した、サイバーセキュリティ能力に特出した未公開の次世代AIモデル。非常に高度なハッキング能力を持つため、現在は限定的な提供にとどまっている。
Project Glasswing: Anthropicが2026年4月に立ち上げた、重要インフラのソフトウェアを保護するための共同イニシアチブ。AWS、Google、Microsoft、Cloudflareなどのテック大手が参画している。
それでは解説に入ります。
2026年5月18日、米国の大手サイバーセキュリティ企業であるCloudflareは、Anthropicが開発した未公開の次世代AIモデル「Claude Mythos Preview」を自社システムでテストした結果を公式ブログで詳細に報告しました。このテストは、Anthropicが世界の重要ソフトウェアを保護する目的で2026年4月に立ち上げた「Project Glasswing」という枠組みの一環として実施されたものです。
Cloudflareの報告によりますと、Mythos PreviewはこれまでのAIとは次元の違う能力を見せています。特に驚くべきは「エクスプロイトチェーンの構築」能力です。実際のサイバー攻撃では、単独では無害に見えるような小さなバグを複数組み合わせて、致命的な攻撃経路を作り出します。Mythos Previewは、まるで熟練のセキュリティ研究者のように、バックログに埋もれがちな軽微なバグを自ら推論して繋ぎ合わせ、深刻なエクスプロイトへと発展させることができるのです。さらに、バグを見つけるだけでなく、実際に攻撃を成立させるためのコードを自動で書いて検証する能力も備えており、これまでのAIツールが抱えていた「誤検知が多すぎる」という課題を劇的に改善しました。実際にCloudflareは、自社の重要システムから約2000個ものバグを発見し、そのうち約400個が深刻な脆弱性であったと報告しています。
一方で、Cloudflareはこうした強力なAIを単純にシステムに放り込むだけでは上手くいかないとも指摘しています。膨大なコードを読み解かせるためには、AIのコンテキストや処理能力の限界を補う工夫が必要です。そこで彼らは、偵察、探索、検証といった役割ごとに複数のAIエージェントを並行して動かす「ハーネス」と呼ばれる独自の仕組みを構築し、効果的に脆弱性を洗い出しました。
このMythos Previewの登場は、業界全体に大きな波紋を広げています。Anthropicが2026年5月22日に発表した初期報告では、Glasswingに参加するパートナー企業全体で、わずか1ヶ月の間に1万件を超える重大な脆弱性が発見されました。中には、セキュリティが強固なことで有名なOpenBSDの27年前の脆弱性すら見つけ出しています。さらに金融市場でも警戒感が高まっており、欧州中央銀行(ECB)は、Mythos Previewへのアクセス権を持たない欧州の銀行がサイバー攻撃の脅威に晒されることを危惧し、米国の銀行に対して情報共有を求める異例の会合を開く事態となっています。
圧倒的な能力を持つAIの登場によって、サイバー攻撃の手法はますます高度化し、攻撃のスピードも加速していくでしょう。Cloudflareが指摘するように、これからの時代はただ「素早くパッチを当てる」だけでは攻撃に追いつけなくなります。万が一バグが存在しても攻撃者が到達できないような、根本的に強固なシステム設計を構築していくことが、私たち防衛側にとって何より大切なアプローチになりそうですね。
今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。