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Ep.1239 Huaweiの逆襲──ムーアの法則を超える「Tau Scaling Law」の衝撃(2026年5月28日配信)
Description
タイトル
Huaweiの逆襲──ムーアの法則を超える「Tau Scaling Law」の衝撃
このエピソードで登場するキーワードを説明します。
Huawei: 中国の大手通信機器・半導体メーカー。米国の厳しい輸出規制下で独自の半導体技術開発を進めている。
He Tingbo: Huaweiの半導体部門(HiSilicon)を率いるプレジデント。中国の半導体戦略における中心的な人物。
Tau (τ) Scaling Law: 従来の物理的な微細化ではなく、信号遅延の時間(τ)を圧縮することに焦点を当てた、新しい半導体進化の法則。
LogicFolding: Tau Scaling Lawに基づき、回路を折りたたんで配線を短縮することで性能と密度を向上させる新しいチップ設計アーキテクチャ。
ASML: オランダの半導体製造装置メーカー。最先端チップの製造に不可欠なEUV(極端紫外線)露光装置を独占的に供給している。
それでは解説に入ります。
2026年5月25日、上海で開催された国際学会「IEEE ISCAS 2026」にて、Huaweiの半導体部門プレジデントであるHe Tingbo氏が、半導体業界の新たな指針となる「Tau (τ) Scaling Law」を発表しました。これまで半導体の世界は、トランジスタの物理的なサイズを小さくしていく「ムーアの法則」によって発展してきましたが、近年はその限界と製造コストの高騰が大きな壁となっています。さらにHuaweiの場合は、米国の制裁によってASML社の最先端EUV露光装置が入手できず、従来の微細化競争を続けることが極めて困難な状況にありました。
そんな逆境の中で、Huaweiが導き出した新しいアプローチがTau Scaling Lawです。これは、部品を小さくするのではなく、信号がチップ内を伝わる時間、つまり「τ(タウ)」を極限まで短くするという発想から生まれました。これを実現する中核技術が「LogicFolding」と呼ばれる新しいアーキテクチャです。回路を立体的に折りたたんで配置することで内部の配線を大幅に短縮し、信号の遅延を抑えるだけでなく、トランジスタの密度を55パーセント、電力効率を41パーセントも向上させることに成功したそうです。
He Tingbo氏によれば、Huaweiは過去6年間にわたりこの設計手法を水面下で磨き上げ、すでに381種類ものチップを設計・量産してきたとのことです。そして2026年秋に登場する予定のスマートフォン「Mate 90」シリーズに搭載される次世代Kirinプロセッサにおいて、このLogicFolding技術が初めて全面的に採用される見通しです。Huaweiはさらにこの技術を突き詰め、最先端の製造装置を使わずとも、2031年までに1.4ナノメートルプロセス相当のトランジスタ密度を持つハイエンドチップを設計できると自信を見せています。
制約を乗り越えるための苦肉の策から生まれた独自技術ではありますが、物理的な微細化が限界を迎えつつある世界の半導体業界にとっても、高価な露光装置に頼らない新しい進化の道筋を提示する、非常に興味深い一歩と言えますね。世界の勢力図を塗り替える可能性を秘めたこの技術に、今後もぜひ注目していきましょう。
今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。