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Ep.1199 島津製作所と理化学研究所が挑む「1秒」の再定義──光格子時計が支える次世代のIT・航空宇宙インフラ(2026年5月14日配信)

Ep.1199 島津製作所と理化学研究所が挑む「1秒」の再定義──光格子時計が支える次世代のIT・航空宇宙インフラ(2026年5月14日配信)

Season 1 Episode 1199 Published 2 months, 2 weeks ago
Description

タイトル


島津製作所と理化学研究所が挑む「1秒」の再定義──光格子時計が支える次世代のIT・航空宇宙インフラ


このエピソードで登場するキーワードを説明します。


島津製作所: 京都に本社を置く日本の大手精密機器メーカー。理化学研究所と長年共同研究を行い、2025年に世界で初めて光格子時計を小型化し、運搬可能な形での製品化に成功しました。


光格子時計: 理化学研究所の香取秀俊教授(東京大学教授)が考案した、レーザー光で作った「光格子」にストロンチウム原子を閉じ込めてその振動を計測する次世代の時計。100億年に1秒ほどしか誤差が生じないという圧倒的な精度を誇ります。


国際度量衡局 (BIPM): 世界共通の単位のルールを定める「メートル条約」の事務局および研究機関。2030年に予定されている「1秒の長さ」の再定義に向けた国際的な評価とロードマップの策定を主導しています。


それでは解説に入ります。


私たちが普段何気なく刻んでいる「1秒」という時間が、約60年ぶりに新しく定義し直されようとしているのをご存知でしょうか。2026年5月12日、島津製作所と理化学研究所は、時間や距離などの国際的な単位を管理する国際度量衡局(BIPM)と覚書を交わしたと発表しました。現在、1秒の長さは1967年以来「セシウム原子時計」を基準に決められていますが、これをさらに精緻なものにするため、日本発の技術である「光格子時計」が新たな基準としてふさわしいかどうか、共同で実証していくことになったのです。この光格子時計は従来の時計の100倍以上の正確さを持ち、なんと100億年に1秒しか狂わないという驚異的な精度を持っています。


なぜこれほどまでに正確な時間が必要になるのかと疑問に思われるかもしれません。実は、現代の情報技術や航空宇宙産業は、極めて緻密な「時間」の同期の上に成り立っています。たとえば、次世代の通信ネットワークである6Gや、金融市場におけるミリ秒単位の自動高速取引(HFT)など、膨大なデータを遅延なくやり取りするITインフラには、ネットワーク全体で寸分の狂いもない時刻の共有が不可欠です。また、航空宇宙の分野に目を向ければ、私たちが日常的に使っているGPSなどの衛星測位システムは、衛星に搭載された原子時計の時刻データをもとに地上の位置を割り出しています。つまり、時計の精度が根本から上がることは、自動運転車やドローンの安全なナビゲーション、さらには深宇宙探査の精度が飛躍的に向上することに直結するわけです。


世界を見渡すと、アメリカの国立標準技術研究所(NIST)やヨーロッパの研究機関も「単一イオン光時計」と呼ばれる別の方式で研究を急ピッチで進めており、次世代の「1秒」の座を巡る国際的な競争と協調が活発化しています。そうした中で、島津製作所が自社の精密なレーザー制御技術や独自の溶接技術を駆使して、持ち運び可能なサイズにまで光格子時計を小型化できたことは、日本の技術力を世界に示す非常に大きなアドバンテージとなります。各地の時計を厳密に比較検証する上で「持ち運べる」という要素は決定的に重要だからです。2026年10月にはフランスで開かれる国際度量衡総会で最終候補が絞られ、2030年にはいよいよ新しい定義が決定される見込みとなっています。日本生まれの基礎研究が企業の力で形になり、世界の新たな標準としてこれからのデジタル社会や宇宙開発の基盤を支えていく未来が、今からとても楽しみですね。


今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。

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