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Ep.917 ゴールドマン・サックス、AIを“雇用”──Anthropicと挑む金融実務の自動化(2026年2月12日配信)
Description
金融業界の巨人、ゴールドマン・サックスが、AIの活用において一線を画す動きを見せました。CNBCの報道によると、同社はAnthropicと提携し、AIを単なる「ツール」としてではなく、自律的に業務をこなす「エージェント」としてバックオフィス業務に投入することを明らかにしました。
このプロジェクトは、過去6ヶ月間にわたり極秘裏に進められてきました。特筆すべきは、Anthropicのエンジニアたちがゴールドマン・サックスの社内に「常駐(embed)」し、行員と膝を突き合わせて開発を行ってきた点です。彼らが作り上げたのは、チャットで質問に答えるAIではなく、会計処理やコンプライアンスチェックといった、銀行の実務そのものを代行するシステムです。
具体的には、二つの領域で導入が始まります。一つ目は「取引照合(Trade Accounting)」です。日々発生する何万件もの取引データを帳簿と突き合わせるこの作業は、これまで多くの人手を要してきましたが、AIエージェントがこれを自動化します。二つ目は「顧客オンボーディング(Client Onboarding)」です。新規顧客の身元確認やリスク審査といった、厳格な規制への準拠が求められるプロセスを、AIが高速化します。
興味深いのは、この展開のきっかけです。当初、ゴールドマン・サックスは「Devin」などのAIコーディングツールをテストしていましたが、その過程でAnthropicの「Claude」モデルが、コードを書くだけでなく、一般的な論理推論やルールの適用においても驚異的な能力を持っていることに気づきました。「これなら、複雑な金融規制も理解できるのではないか?」──その発想の転換が、今回のバックオフィス改革へと繋がったのです。
同社のマルコ・アルジェンティCIOは、これらのAIを「デジタル同僚(Digital Co-worker)」と呼んでいます。彼は「人員削減が目的ではない」としつつも、外部委託(コントラクター)の必要性は減るだろうと示唆しています。ウォール街で最も権威ある銀行が、最も堅実さが求められる業務にAIを任せたという事実は、金融業界全体におけるAI導入のフェーズが「実験」から「実務」へと完全に移行したことを告げています。