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Ep.620 日立と富士通、NVIDIAと並走──“Physical AI”と“AIエージェント”で産業AIの土台づくりが加速(2025年10月9日配信)
Description
本日は、日本の大手2社がNVIDIAと手を組み、産業向けAIインフラを一気に“実装フェーズ”へ押し出す動きを取り上げます。まず日立は、NVIDIAのリファレンスに沿った「AI Factory」を米国・EMEA・日本に分散配置し、自社のOTノウハウと組み合わせてPhysical AIを素早く開発・展開できる体制を発表しました。基盤にはBlackwell世代のHGX B200を採用した「Hitachi iQ」、推論を加速するRTX PROサーバー、さらにSpectrum-Xによるネットワーキングを採用。OmniverseやAI Enterpriseも活用し、デジタルツインから現場自動化までを一気通貫で回す狙いです。
一方の富士通は、NVIDIAとの戦略的協業を拡大し、産業横断で使える“自律進化するAIエージェント”にフォーカスします。ヘルスケアや製造、ロボティクス向けに、Kozuchiや独自のマルチAIエージェント技術を土台に、NVIDIAのNeMoやDynamo、NIMマイクロサービスを組み合わせて、顧客要件に合わせたエージェントを迅速に構築。さらに、同社の次世代CPU「FUJITSU-MONAKA」とNVIDIA GPUをNVLink-Fusionで密結合し、ソフトウェア面ではArm向け最適化とCUDAを統合。ゼタスケール級を見据えたHPC-AIの土台を、シリコンレベルから“日本発のフルスタック”として作り込む構想を示しました。
2社の発表は、キーワードこそ「Physical AI」と「AIエージェント」で異なりますが、実は目線がそろっています。いずれも現場データの取り込みから意思決定、実行までをクラウド/データセンター側で高密度に統合し、産業ごとの要件に合わせたワークロードを素早く回すこと。日立は鉄道・エネルギーなどOT密着の既存案件をAI Factoryで横展開しやすくし、富士通はエージェント化で“業務単位”の導入障壁を下げる――という分担が見えます。共通の底流として、NVIDIAの最新GPU、ネットワーク、ソフトウェアスタックを“標準装備”にすることで、開発スピードと性能を確保する意思が明確です。
実務インパクトを具体化すると、製造ではデジタルツインとロボティクスをつなぐライン最適化、交通では保守の予兆検知から自律運行支援、エネルギーでは需給制御の自動化といった領域で効果が出やすいでしょう。日立はHMAXを軸に既存の現場知見をAI Factoryへ載せ替え、グローバル分散で低遅延アクセスを提供。富士通はマルチテナント対応のエージェント基盤により企業ごとのカスタマイズを効率化し、NIM経由で配布・運用まで見据えます。日本発の大手が“共通のNVIDIAスタック”を使いつつ、それぞれの強みで産業AIの実装を押し広げる構図です。
最後に、中長期の見どころを一つ。富士通が示した「MONAKA×NVLink-Fusion」の密結合は、CPUとGPUの境界を薄め、データ移動のボトルネックを抑える方向性を示します。ここに日立のAI Factoryが持つネットワーク最適化や液冷データセンター運用の知見が市場全体で波及すれば、日本の産業AIは“自律的に学習して実行する”段階へ、より現実味を持って進むはずです。