Episode 572
ChatGPTの利用者はGoogleの1%以下というデータ、信じて大丈夫でしょうか。本エピソードでは、こうしたニュースを鵜呑みにする危険性と、中小企業経営者が持つべき視点を取り扱います。
SEOやAIといった手法論争よりも大切なのは、自社のお客様が何を使って情報を探しているかを知ること。時代に左右されない、本質的なWebマーケティング戦略を築くためのヒントがここにあります。
「Google検索は今後も勝ち続けるのか、それともChatGPTのような生成AIが情報探索のメインになるのか」。Webに関わる方なら、一度はこんな議論を見聞きしたことがあるかもしれません。
今回は、この勝ち負けの話ではなく、私たち中小企業の経営者やWeb担当者が、この状況をどう受け止め、ニュースをどう読み解いていけばよいかについてお話しします。
結論から言うと、現時点でどちらが勝つかは誰にも分かりません。ですから、大切なのは勝ち負けを予測することではなく、変化するお客様の行動にどう向き合っていくか、という視点です。
最近、ある調査データが話題になりました。それによると、1日あたりの検索(あるいはそれに準ずる行動)の回数は、Googleが約140億回であるのに対し、ChatGPTでは推定約6600万回だということです。この数字だけを見ると、ChatGPTの利用はGoogleの1%にも満たず、まだまだ影響は小さいように見えます。
確かに、20年以上の歴史があり、私たちの生活に深く根付いているGoogleの検索という習慣は、そう簡単には変わりません。絶対数で言えば、Googleが圧倒的であることは事実でしょう。
しかし、この「回数」という数字だけで物事を判断するのは、少し早いかもしれません。本来、私たちが評価すべきなのは、検索の回数ではなく「そのツールでどれだけ問題が解決できたか」です。
Google自身も、少ないクリックでユーザーの問題を解決することを目指しています。何度も検索しなければならない状態は、決して良い体験とは言えません。
そう考えると、検索回数というボリュームだけで比較することには、あまり意味がないことが分かります。重要なのは、お客様が抱える問題が、どのツールによって、どれだけスムーズに解決されているかという「質」の部分です。
また、先ほどのデータは「検索っぽい行動」に絞って比較していますが、これも一つの側面に過ぎません。ChatGPTのような生成AIは、これまでGoogle検索では解決しづらかった、より対話的で個人的な悩み相談などにも使われています。
つまり、生成AIは、これまでGoogleがカバーしてこなかった新たな「問題解決」の領域を切り拓いている可能性があるのです。「検索」という枠だけで比較すると、この変化を見誤ってしまうかもしれません。
では、私たち中小企業は、この変化の時代にどう対応すればよいのでしょうか。結論はシンプルです。世の中の大きなデータやトレンドに一喜一憂するのではなく、「目の前のお客様が何を使っているか」をきちんと把握することです。
世の中でChatGPTの利用がどれだけ増えたか、Googleの利用がどれだけ減ったか、というマクロな情報を気にする必要はありません。たとえ世の中全体では少数派だったとしても、自社のお客様が新しいツールを使い始めているのであれば、それに対応する必要があるからです。
そのためには、お客様が普段、どういう場面で、どんなツールを使って情報を集めているのかを、定期的にチェックする仕組みが不可欠です。
こうした地道な活動を通じて、お客様の行動(カスタマージャーニー)を具体的に把握することが、何よりも強力な武器になります。
もし、今お客様との接点が少なく、何をしているか分からないという状況であれば、今後のWeb活用は厳しくなる可能性があります。まずは、お客様との関係性を構築し、その声を聞ける仕組みを作ることが最優先です。
「Googleか、AIか」という二者択一の議論には、あまり意味がありません。どちらかのツールが優れている、という話ではなく、お客様の問題解決の方法が多様化している、という事実を捉えることが大切です。
私たち中小企業がやるべきことは、次の3つに集約されます。
外部の大きな情報に振り回されるのではなく、自社の足元をしっかりと見つめ、お客様と向き合うこと。それこそが、これからの時代を生き抜くための、最も確実なWeb戦略と言えるでしょう。