Episode 571
日本でもGoogleの「AIモード」が利用できるようになりました。すでにお使いになった方もいらっしゃるかもしれません。この新しい検索体験は非常に便利ですが、ビジネスの観点からは注意すべき点もあります。
その1つが「自社の情報がAIによってどのように扱われるか」これは重要です。どうしても「ターゲットキーワードを含めた文章に対して自社が出ているかな…」といった競争のことだけを考えがちですが、それと同じくらい大事です。
そこで今回は、AI検索の時代における自社のブランド防衛について、ポイントをまとめて行きます。
AI検索は、これまでの検索よりも自社の評判に対して一方的な情報が拡散されるリスクがあります。
その理由は、AI検索の情報の見せ方と、AIそのものの特性にあります。
従来のGoogle検索では、検索キーワードに対して、関連するウェブサイトが一覧で表示されました。
そのため、一つのサイトにネガティブな情報があっても、他の複数のサイトを見ることで、ユーザーは多角的に情報を判断できました。
しかし、AI OverviewやAIモードは、様々な情報を要約し、基本的に「一つの回答」を提示します。これにより、複数の情報源の中の一つに過ぎなかったネガティブな情報が、世間一般で共有されている「正しい」見解であるかのように捉えられてしまうリスクがあるのです。一度そのような情報が提示されると、それが正しい情報として広まりやすくなる怖さがあります。
AI(大規模言語モデル)は、情報の真偽や善悪を判断しているわけではありません。ものすごく単純化すれば、膨大なウェブ上のデータを元に、概念と概念の位置や距離を多次元で学習しているだけです。
そのため、学習データの中に誤った情報や偏った情報、悪意のある情報が含まれていれば、それがそのまま出力に反映されてしまう可能性があります。モデル内でファクトチェックの機能が働いているわけではないのです。(一定の出力ルールや規制によって出せる言葉や内容などはありますが、企業の評判などは字面や内容としては規制すべき物ではないでしょう、適切な物もありうるわけですから)
では、その様な状況で具体的に何をすればよいのでしょうか。
これは、とにもかくにも、自社がAIにどう認識されているかを把握することです。
まず、ご自身の会社名や提供しているサービス名で、AIモードを使って検索してみてください。
このように、見込み客や取引先が調べるであろう視点で検索してみる。
特に、長年ウェブサイトを運営している会社の場合、過去の古い情報や、今は行っていないサービス、過去購入した低品質なバックリンク・被リンクなどの情報にAIが影響を受け、現状と異なる内容が表示されることがあり得ます。プレスリリースなどに引っ張られることもあります。
不適切な物は、引用をたどって適切に削除や修正などの対応を行うべきです。
一度チェックして終わりではなく、この作業を定期的に行うことが大切です。ウェブ上の情報は常に更新されており、AIの学習データも変化し続けるため、ある日突然、自社にとって不利益な情報が表示されるようになる可能性もゼロではありません。特に、BtoB事業や採用活動に力を入れている企業にとって、オンライン上の評判は致命的になりかねないため、週に一度程度のチェックをおすすめします。
さらに、意図的にAIの学習を汚染し、特定のブランドの評判を操作しようとする攻撃の可能性も指摘されています。これは「Directed Bias Attacks」とも呼ばれ、AI時代の新たなリスクとして認識しておく必要があります。
これは、ブログやレビューサイト、SNSなど、ウェブ上の様々な場所に、特定の企業に関するネガティブな情報を大量に、かつ巧妙に配置することで、AIにそれを学習させ、検索結果を汚染するという手法です。このような攻撃は、仕組みを考えると十分に起こり得ると考えられます。
参照記事:A Hidden Risk In AI Discovery: Directed Bias Attacks On Brands?
https://www.searchenginejournal.com/a-hidden-risk-in-ai-discovery-directed-bias-attacks-on-brands/556179/
現状では、AIが生成した内容に対して、プラットフォーム提供者(GoogleやOpenAIなど)の責任を問うことは法的に難しいとされています。そのため、攻撃を受けたとしても、法的な解決には時間がかかり、現実的ではないかもしれません。だからこそ、企業は自らブランドを守る「自衛」の意識を持つことが不可欠になります。
もし、自社の検索結果に問題が見つかった場合、次のような対策を検討しましょう。
GoogleのAI Overviewでは、多くの場合、情報の参照元となったウェブサイトへのリンクが表示されます。まずはそのリンク先を確認し、どの情報が影響を与えているのかを特定します。その上で、サイトの運営者に連絡を取り、情報の修正や削除を依頼するというのが基本的なアプローチです。
同時に、自社の公式サイトやブログ、SNSなどを通じて、正確でポジティブな情報を積極的に発信し続けることも重要です。これにより、AIが参照する正しい情報源を増やし、不正確な情報の影響を相対的に下げていく効果が期待できます。
現実的に、生成AIのシェアはChatGPTがその多くを占めています。そのため、モニタリング対象としては、以下の3つを優先的にチェックすることをおすすめします。
AIモードやAI検索はまだ始まったばかりで、利用率も高くはありません。しかし、今後Googleが広告を導入するなど本格的な普及に乗り出せば、数年のうちにあっという間に検索の主流になる可能性があります。
今のうちからAI検索の特性を理解し、自社の情報がどのように扱われているかを定期的にチェックする習慣をつけることが重要です。AIが生成する自社の評判は、いわば「第二のホームページ」のようなもの。これからのウェブ担当者にとって、そのメンテナンスは欠かせないタスクの一つになっていくでしょう。ぜひ、この機会に自社の評判をチェックしてみてください。
Published on 4 weeks ago
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