Episode 527
いきなり「これをやればいい」という処方箋を探すのではなく、自分の会社とお客様の状況から、一緒に考えていくための材料として読んでもらえればと思います。
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。よくいただく質問の一つに、「Webマーケティングを行う際の最初のステップは何ですか」というものがあります。
この質問の背景には、どこかで「Webには何か特別な手法があって、それを使えば一気に集客できるのではないか」という期待があることが多いです。特に、広告費が直接は見えづらいSEOやSNSのような施策には、そういったイメージがつきまといやすいところがあります。
結論から言うと、「Webマーケティングを行う際の最初のステップ」という形の、万人共通の答えはありません。
今の私たちは、ほとんど常にスマートフォンを持ち歩き、いつでもインターネットに接続して情報を得ています。いわゆる「ユビキタス」な環境の中で暮らしています。
この状況で、「ここからがWeb」「ここからがリアル」と線を引いて考えること自体が、現実の行動とあまり合わなくなっています。
皆さん自身の行動を思い返してみてください。
こういった区切りを意識することは、ほとんどないはずです。実際には、日々の生活の中で、
といった、自分なりの「習慣」があるだけです。その中に、自然にWebもリアルも入り混じっています。
それは、そのままお客様側でも同じです。年代や趣味・嗜好、業界などによって多少の違いはあっても、基本的には「Webとリアルをきれいに分けて行動している人」はほとんどいません。
ここでよく出てくるのが、カスタマージャーニーマップやペルソナという考え方です。
これらは今でも役に立つ場面がありますが、以前のように「きれいな一直線のモデル」として使おうとすると、現実とズレやすくなっています。
Googleが示している「バタフライ・サーキット」や「パルス消費」という考え方でも説明されているように、今の消費者は、
という、まっすぐなプロセスをたどることが減っています。
私たちは普段から「損をしたくない」「きちんと自分で考えたというアリバイを作りたい」という気持ちを持っています。その結果として、
といったことを、頭の中で何度も繰り返しています。
この、深掘りすることと一旦忘れることを行ったり来たりする動きが、「バタフライ・サーキット」のイメージです。その中で、ふとしたきっかけで「そういえば、あれ欲しかったんだよな」と強く意識が戻り、一気に購買に踏み切る瞬間が生まれます。これが「パルス消費」です。
こういう前提に立つと、従来の「認知→関心→比較→検討→購買」ときれいに並んだカスタマージャーニーは、現実の動きと合わないケースが増えてきます。途中からいきなり始まったり、急に最初に戻ったりするので、「一枚の絵」として描いても、その通りには動いてくれません。
ペルソナも同じで、「典型的なお客様」を一人にまとめてしまうと、どうしても脳内ペルソナ、つまり自分の頭の中だけで作った仮想のお客様になりがちです。
こうした前提を踏まえると、「Webマーケティングの最初のステップは何か」という問いは、次のように言い換えられます。
「自分たちが来てほしいお客様が、どうやって情報を集め、どんなタイミングで、何をきっかけに行動しているのかを、できるだけそのままの形で理解すること」
ここで大事なのは、
の考え方を知っていくことです。
そのためには、
といった一次情報(生の情報)を集めていくことが、何よりも重要になります。
つまり、「Webマーケティングだからこうしよう」ではなく、
という順番で考えていくことが、「最初の一歩」にあたるということです。
最初の質問とよくセットで聞かれるのが、
「どのようにして効果的なWebマーケティング戦略を立てることができますか」というものです。
言葉としては「戦略」となっていますが、多くの場合、頭の中でイメージしているのはWebマーケティングの施策です。つまり、中身としては「最初のステップは何ですか」という質問とあまり変わりません。
ここでポイントになるのが、「効果的な」という言葉です。これは多くの場合、
という気持ちの表現です。その気持ちは、経営者としてもよく分かります。
ただ、本当に意味のある「効率の良さ」は、ある程度しっかり取り組んでいき、
といった「引き出し」が増えてきたあとに、初めて見えてくる部分が大きいです。
人間を相手にした仕事や、集団を相手にした仕事は、やはり考えることが必要です。「過程はどうでもいいから、アウトプットだけ欲しい」という種類の仕事とは違います。
ですから、「最初から効果的な戦略だけを選びたい」と考えすぎると、かえって大事なところを見落としてしまうことがあります。まずは、お客様をよく知ることと自社で
Published on 1 year, 4 months ago
If you like Podbriefly.com, please consider donating to support the ongoing development.
Donate