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第534回:Web担当者が見つからない、外部パートナーと協力し社内にノウハウを蓄積する実践論
Description
内容について
ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。
うちでは、社内研修や外部向けの研修で、日々いろいろなご質問をいただきます。全部にはその場で答えきれず、質問をずっとストックしてきたのですが、改めて分類してみたところ、大きく次の10項目に分かれることが分かりました。
- 人材・スキル関連
- 予算・リソース関連
- 戦略・計画関連
- 実施・運用関連
- コンテンツ関連
- 技術・ツール関連
- 成果・効果測定関連
- 組織・体制関連
- 法律・規制関連
- 新規顧客獲得・ブランディング関連
それぞれの大項目に、5〜6個ずつの個別の質問がぶら下がっている状態です。以前「ウェブマーケティング一問一答」という形でまとめて扱ったこともありますが、今回は一つ一つの質問をもう少し丁寧に、個別のテーマとして取り上げていこうと思います。
今回はその中の「人材・スキル関連」の一つ目、つまり
デジタルマーケティング(Webマーケティング)の専門知識を持つ人材がどうしても不足している。採用しようとしても見つからないし、社内にもいない。どうしたらいいのか。
というお悩みについて、現場での経験も交えながらお話しします。
「デジタルマーケティング人材がいない」は本当に人材不足なのか
まず押さえておきたいのは、Webマーケティングも、基本的には「普通のマーケティング」「営業」と同じ世界だということです。チャネルに「Web」が入っただけで、やっていることの本質はそれほど特殊ではありません。
ところが、Web担当者やデジタルマーケティング人材に対して、こんなイメージを持っているケースがとても多いと感じます。
- デジタル・Web・IT全般に広く詳しい
- SEO、広告、SNS、各種コンテンツなど一通りやったことがある
- 施策の設計から実行・分析・改善まで一人で回せる
- 最新情報も常にキャッチアップしていてトレンドに詳しい
- しかも社内を引っ張るリーダーシップもある
つまり、「何でもできるデジタルのスーパーマン」を無意識に求めてしまっているケースが多いのではないか、ということです。
同じ条件で「営業のスーパーマン」を採ろうとしたらどう感じるか
これを、リアルの営業に置き換えてみてください。
例えば、こんな人を採ろうとしているイメージです。
- 新規開拓・既存深耕、アウトバウンドもインバウンドも一通りの手法に精通している
- 業界ごとの攻め方や、最近の営業手法(例えばアカウントベースドマーケティング)もよく知っている
※アカウントベースドマーケティング(Account Based Marketing)は、特定の企業アカウントごとに戦略を組み立てて集中して営業・マーケティングを行う考え方です。 - チームを率いてマネジメントもできる
- 施策の計画・実行・評価・改善、いわゆるPDCA(Plan・Do・Check・Act)を回すのも得意
- しかも最新の営業トレンドも常に追いかけている
こういう人を「普通に求人を出して採用しよう」と考えたら、どうでしょうか。多くの方は「そんな人、そもそもなかなか市場に出てこない」と感じるのではないでしょうか。
Webの世界もまったく同じです。「すごい人」は、そもそも転職市場にほとんど出てこないのです。
優秀な人材はなぜ転職市場に出てこないのか
本当に優秀な人は、人づてで次の職場が決まってしまう
私の経験上、本当に優秀なWeb・マーケティング人材は、たいていこんな流れで動きます。
- 今の会社で高い評価を受けているので、そもそも会社が手放さない
- もし退職するとしても、同業者や取引先など「人づての紹介」で次が決まる
- そのため、一般的な転職サイトや人材市場に出てくる前に次の会社が決まる
結果として、普通に求人を出して待っていても、「すごい人」が応募してくる確率はかなり低いのが現実です。
実際に転職市場に出てくるのは、例えばこんな方が多い印象です。
- 特定の分野に強みがある(広告運用だけ、SEOだけ、など)
- プロジェクトマネジメントや全体管理の経験はあるが、実務は一部に偏っている
- 長く同じ会社にいたため、外部とのつながりが少なく、自分で転職市場に出て次を探している
もちろん、こうした方々がダメという話ではありません。ただ、「何でも一人でできるスーパーマン」を想定していると、いつまで経っても採用がうまくいかないということです。
「Webだから特別」という思い込みをいったん手放す
もう一つ、よくある思い込みとして、
- Webは専門性が高いから、そこで食べている人は「狭い世界のことは全部分かっている」はず
- だからWeb担当者なら、SEOも広告もSNSもコンテンツも、全部それなりにできるはず
という期待が無意識に乗っているケースがあります。
しかし実際には、Webもリアルも、「複数のチャネルの一つ」にすぎません。今はネット経由で情報を取る人もいれば、リアルでの接点を好む人もいる。その両方をどう組み合わせるかを考えるのがマーケティングです。
「Webだから特別な世界」「穴場が残っていて楽に成果が出る世界」という見方は、もう当てはまりません。むしろ、普通の営業・マーケティングと同じくらい、地味に積み上げていく世界だと考えてもらった方が現実に近いと思います。
本当に大事なのは「スーパーマン探し」ではなく「仕組みづくり」
ここまでを踏まえると、よくある悩みである
デジタルマーケティングの専門知識を持つ人材がいない。だから勝てない。
という問題の立て方には、少しズレがあります。
正しくは、
デジタルに限らず、何でもできるスーパーマンはそもそも取れない。
だから「すごい人がいなくても回る仕組み」を社内につくる必要がある。
という視点で考えた方が現実的です。
「良い人材がいないと勝てない会社」は、とても脆いです。良い人材ほどどこかに引き抜かれたり、独立したりする可能性が高くなります。
それよりも、
- ほどほどのスキルを持ったメンバー
- あるいは、今は知識がないけれど吸収が早いメンバー
といった人たちを組み合わせて、「チームと仕組み」で成果を出す会社の方が、長期的には強くなります。
良い人材が「ここで働きたい」と思う会社とは
環境が悪い会社ほど、優秀な人からは避けられる
WebやITに理解のない会社、あるいは活用に対して後ろ向きな会社は、正直なところ、経験のある人ほど行きたがりません。
理由はシンプルです。
- 社内の理解を得るために、文化づくりから始めないといけない
- 投資の重要性の説明や、部門間調整など「本来の仕事以外」の負担が大きい
- WebやITの価値が理解されていないため、給与や評価に反映されづらい
こういう環境では、スキルのある人ほど「やりがいはあるかもしれないが、消耗が大きい」と判断しやすくなります。
「ここなら自分の力を活かせる」と思える場をつくる
一方で、うまく回っている会社では、こんな動きもよく見かけます。
- 付き合いのある制作会社や代理店の担当者が、退職するときに
「御社の中で、Web担当として働かせてもらえませんか」と相談してくる - 外部の人から見ても、「ここなら自分が入ったらもっと伸ばせそう」と感じられる<