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みんなが手話で話す村は、現代日本にもあった。#420

みんなが手話で話す村は、現代日本にもあった。#420



【本シリーズを監修した原大介先生からのコメント】

20:05 「『口話』を重視」、「話している人の口の動きを読んで音声言語でコミュニケーションを目指す」について

「口話」は、相手が話していることを理解するために口の動きを「読む」だけでなく、聴者に言いたいことを伝えるために自分には聞こえない音を発声して音声として意思を伝達することも含まれます。


20:37 「そういう方針はいまだに変わっていない」について

「音声言語を教えるべき」という方針は、現在のろう学校(正式には「特別支援学校」)でも大きくは変わっていないのは事実ですが、ろう学校で使用するコミュニケーション手段に関しては、近年、文科省の態度が変わってきています。かつては、ろう教育において手話の使用を事実上禁止していました(1933年、当時の鳩山文部大臣による発言)が、2000年ごろを境に手話の使用も容認し始めました。ただ、これは、児童・生徒の聴力の状態に応じて「音声日本語」以外のコミュニケーション手段も適切に活用してもよいということであり、手話のみで各教科(算数、数学、理科、社会等)の教育を行ってもよいという意味でありません。


20:55 「日本語対応手話」「手指日本語」について

一般的には水野さんがおっしゃっている内容で問題はないと思います。細かいことを言えば、「日本語対応手話」や「手指日本語」を「手で表された日本語」と考えていない研究者もいます(私もそうです)。簡単に言えば、日本語に100%対応させて手話を表すことは原理的に不可能であり、そのため日本語を手指で完璧に表すことはできません。つまり「日本語対応手話」や「手指日本語」は理想的な概念に近く、厳密には実在しないと私は考えています。日本語を手指で表そうとする時点で零れ落ちる日本語的特徴(アクセント、リズム、イントネーション、格助詞、終助詞等)がありますし、(不完全であっても)手指で表した日本語には、日本手話的特徴(リズム、イントネーション、非手指動作、マウスジェスチャー、日本手話の語順、動詞の屈折、空間利用等)が部分的に表されることも多く、その結果、日本語とも日本手話とも明確に分類できない、両者の特徴を部分的に含みつつも、それ自体として独立した性質を持つ表現形式になることが多いと思われます。そのため、この表現形式を「日本語対応手話」や「手指日本語」という呼称ではなく、「混成手話」や「ハイブリッド手話」と呼ぶ研究者もいます。(参考:原大介. 2023. 「影響することば[手話言語と中間手話]」. 菊澤律子・吉岡乾編著『しゃべるヒト-ことばの不思議を科学する』. 文理閣, pp.266-276.)


【その他の補足】

25:36 宮窪手話がリストアップされていないのは、手話言語自体が消滅危機言語に指定されたことがないためだそうです(2020年時点)。


参考文献:高嶋由布子(2020)「危機言語としての日本手話」『国立国語研究所論集』 (18), 121-148

https://doi.org/10.15084/00002544


【水野の単著が発売しました!】

◯会話の0.2秒を言語学する

https://www.valuebooks.jp/bp/VS0063382097


【概要】

「みんなが手話で話す島」は日本にもありました。

「愛媛にある”みんなが手話で話す島”」「孤独を深める村落手話の実態」「誰もが陥いる経済性の罠」など、日本の村落手話、宮窪手話について話しました。


【目次】

00:00 日本にもあった!みんなが手話で話す島

07:17 数の数え方は、5種類ある

16:38 手話話者の悲しい分断

26:39 誰もが陥る経済性の罠

33:28 除湿機の水は魔法の水

34:56 なぜ差別は生まれる?

40:04 『会話の0.2秒を言語学する』の裏テーマ


【参考文献のリンク】

◯みんなが手話で話した島

https://www.valuebooks.jp/bp/VS0084950741


◯目で見ることばで話をさせて

https://www.valuebooks.jp/bp/VS0083321872


◯手話言語学のトピック:基礎から最前線へ

https://amzn.to/41Ry9Yy


◯矢野羽衣子、松岡和美(2017)「愛媛県大島宮窪町の手話:アイランド・サイン」、岩波書店『科学』5月号、415-417ページ

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I028128612


◯矢野羽衣子、松岡和美(2017)「愛媛県大島宮窪地区の村落手話(地域共有手話)における二種類のタイムライン」、日本言語学会大会予稿集 第155回

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000039-I11255211


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【堀元見プロフィール】

慶應義塾大学理工学部卒。専攻は情報工学。理屈っぽいコンテンツを作り散らかすことで生計を立てている。

Twitter→ Published on 7 hours ago






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